CGHの高速計算に向けた最も有効な手法の1つとされているのが,ルックアップテーブル(look-up table; LUT)法と呼ばれる手法です.これは,点光源 (point-light source; PLS)の波面を事前計算してメモリに格納し,CGH計算時に逐次読み出すことで,計算負荷を軽減できる手法です.しかし,LUT法には必要メモリ量が膨大であるという課題があります.Crepe and Stamp アルゴリズムは,LUTに必要なメモリ量を,波面データの圧縮/伸長によって削減する手法です.この手法では,ディジタルな円を描画するアルゴリズムを活用し,必要メモリスペースを1000分の1にまで圧縮することに成功しています.また,計算速度も従来手法に比較して2~9倍の高速化を実現しています.
波面の同心円形状を利用した高速計算
平面上に作られる点光源の波面は同心円状をしています(左図).私達の手法では,線状に圧縮した波面データをディジタルな円を描画するためのコンピュータグラフィクス(computer-graphics; CG)のテクニックを使って伸長します.円描画アルゴリズムは整数演算のみで構成されるため,高速に伸長できることが特長です.加えて,私達の手法には円描画時に発生する量子化誤差の補正手法も含まれているため,圧縮による画質劣化も抑制できます.
高速な同心円描画アルゴリズム
さらなる高速化のためには,円描画時に発生するランダムメモリアクセスを回避する必要があります.そのため,私たちは同心円を描画するための漸化式を開発し,課題解決を図りました.この手法では,右図のようにx軸方向の半径の分布を用いることで,円描画にかかる計算負荷を小さくしています.メモリは一般にx軸方向に連続しており,連続方向に読み書きすることでメモリのアクセス効率を高めることができます.この手法では,x軸に沿って波面データを伸長することで,計算効率を上げています.
References
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Takashi Nishitsuji, Tomoyoshi Shimobaba, Takashi Kakue, Nobuyuki Masuda, Tomoyoshi Ito,
"Fast calculation of computer-generated hologram using circular symmetry of zone plate",
Optics Express, 20, 27496-27502 (2012).
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Takashi Nishitsuji, Tomoyoshi Shimobaba, Takashi Kakue, Tomoyoshi Ito,
"Fast calculation of computer-generated hologram using run-length encoding based recurrence relation,"
Optics Express, 23, 9852-9857 (2015).
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